理事長挨拶
皆さん、こんにちは!にこっと秋田の八代と申します。
私は今年で看護師になって27年目になります。そのうち20年を重い障がいのある子ども達と一緒に過ごしてきました。
医学が進歩したことによって、今まで助からなかった命が救われるようになりました。そのため障がいと共に生きていく子ども達も増えてきています。
生まれてから何度も痛くてつらい治療をしたり、命の危険にさらされたりと、大変な思いを本人もそのご家族もされています。そんな苦難を乗り越え「今」を一生懸命生きる子ども達を私は愛おしくてたまりません。
今ではみんなのことを敬意をこめて「めんこさん」と呼ばせてもらっています。
めんこさん達は、自分で体を動かすことができなかったり、言葉での表現が難しいので、まばたきや表情、わずかな指の動きなど、全身を使って私たちに気持ちを伝えてくれます。
また、呼吸が十分にできず人工呼吸器をつけていたり、飲み込む力が弱くチューブから栄養を取っていたりと、医療的ケアが必要な子ども達が多いです。
そしてそのご家族は、自宅で24時間365日介護をし、精神的にも身体的にも休まる時間がないのが現状です。
私が病院で働いていた時のことです。めんこさんの介護の中心だったお母さんの体調がすぐれず、受診を勧めたところ「私が入院している間、この子を安心して預けられる場所がない。私が死ぬときは、この子に覆いかぶさって死ぬから」要は道ずれにするといわれたんです。
ショックでした。
預ける場所さえあればそんなこと言わなくてもいいはずなのに。
すごく考えさせられました。
当時、秋田市内には、めんこさん達を対象としたデイサービスは少なく、受け入れ体制が十分とは言えませんでした。
「安心して預けられる場所がないのであれば、自分で創ろう」
そう思い立ち、それまで勤めていた職場を退職し、2018年4月「NPO法人にこっと秋田」を設立、そして10月、秋田市御野場に多機能型重症児者デイサービス「にのに」を立ち上げました。 施設の番地が2-2なので「にのに」と名付けました! にのにでは、1日あたり平均6~8人を受け入れ、生活の援助や活動をしています。
めんこさん達が住み慣れた地域で生きていくためには、地域の皆さんの協力が必要です。今はSNSで活動を紹介したり、活動で外出をしたりして皆さんと関わりを持つようにしています。
「声をかけていいのかわからない」「失礼なことを言ってないか心配になる」など、めんこさん達のことを知ることや話しかけることを躊躇してしまう方は多いと思います。それは正直な反応で恥ずかしいことでも何でもないんです。関われば関わるほどお互いを知ることができ、めんこさん達がいることが当たり前になってくると考えています。
今は人生100年時代と言われています。医学の進歩で、病気にはかかっても治療ができ、その代わり体のどこかに不自由さを抱えながら生きていく時間が私たち自身、長くなるのかもしれません。みんなが「住み慣れた地域で生ききる」ために、お互いを思いやり認め合う優しい社会になるよう、これからも頑張っていきたいと思います。
2022年10月 特定非営利活動法人にこっと秋田 理事長 八代美千子